木を弱らせてしまうヤドリギを採取する「ヤドリギプロジェクト」

2015年1月31日(土)

 

ヤドリギを採取するアーボリストと呼ばれる職人。樹高30mはあるような木でも、あっという間に登っていきます。

ヤドリギを採取するアーボリストと呼ばれる職人。樹高30mはあるような木でも、あっという間に登っていきます。

 ヤドリギをご存じでしょうか。鎮守の森などの樹上で鳥の巣のような球状の塊を作る植物です。木に寄生して、栄養を奪いながら生長するので、寄生した木を弱らせ、時には落枝などの事故を起こすことがあります。
このヤドリギは果実を鳥が食べることで広がります。種子は果実の内部に詰まった粘液に守られているため、鳥の消化器官を通り抜け、糞とともに排出されます。そのうち樹上に落ちて貼り付いた種子が発芽して根を下ろし、栄養を奪い始めるのです。つまり、とても生き残り戦術に長けた植物と言えます。
かつてヤドリギは、鳥や昆虫を捕まえる“鳥もち”などに使われていました。しかし、鳥獣保護法で使用が禁止された今では使われなくなり、採取できる人も減ったため、ヤドリギが寄生した危険な木が増えてしまいました。
この状況に危機感を抱いたNPO法人森林風致計画研究所(長野県松本市)が、昨年、「ヤドリギプロジェクト」を立ち上げました。樹木医の資格を持つ樹木専門の職人たちが、ロープを使って樹上を自由自在に移動しながら、ヤドリギの採取を含めた樹勢回復作業を行います。その費用の一部を、採取したヤドリギの販売収益でまかなう仕組みです。実はヤドリギ、リースなどの花材としてとても人気が高いのです。
この取り組みを多くの方に知っていただきたいと思い、今年の採取風景を動画で記録しました。下記のアドレスを入力すればYouTubeの動画ページにリンクしますので、ぜひご覧ください。

http://youtu.be/Ba9DBWmSrDQ

特定非営利活動法人里山保全再生ネットワーク

岩間 敏彦

特定非営利活動法人里山保全再生ネットワーク代表理事。本業(ライター・カメラマン等)で培った技能を生かして社会貢献をしたいと考え、里山保全を始めとする環境保護活動に参加してきた。現在は里山保全・再生に軸足を置きつつ、複数の環境NPOで代表理事・理事などを務める。