伝統的な竹細工から見えること

2012年7月20日(金)
みすず細工によるトランク。軽く、通気性がよいなど、多くのメリットがあります。

みすず細工によるトランク。軽く、通気性がよいなど、多くのメリットがあります。

今年5月、長野県松本市の松本市立博物館で開かれた「復活みすず細工展」を見てきました。「みすず細工」とは、スズタケという細い竹から作る伝統的な竹細工です。ザル、行李などが日常的に使われていたほか、特産品として海外に輸出されていた時代もありました。しかし、安価なプラスチック製品の普及もあり、年を追うごとに需要は減少。2009年には最後の「みすず細工職人」が亡くなり、技術が途絶えかけました。素材のスズタケも、生息環境の変化やニホンジカによる食害などにより、希少な植物となってしまったのです。

一方、地域の暮らしに根付いてきた工芸を、何とか継承したいと考えた人たちにより、2011年、「みすず細工復活プロジェクト」が立ち上がりました。現在は独力で学び始めた職人さんたちが、製品を作り始めたところです。

この「みすず細工」からは、多くのことが学べます。筆頭に挙げられるのが、再生可能な資源の大切さです。製品が売れれば、労力に見合った利益が得られる上に、スズタケが生える山の手入れも進み、素材を永遠に入手できるようになります。もちろん、石油由来のプラスチックのように、環境に影響を与えることはありません。この国はそのような素晴らしい資源と伝統工芸を放棄してきた歴史があるのです。

これは中パさんの竹紙にも通じることです。身近にある再生可能な優れた素材を見つめ直し、活用することで、資源枯渇や環境破壊など、多くの問題を解決する糸口が見えてきます。弊団体では「みすず細工」の今後を追いかけながら、再生可能資源の活用や、伝統的な里山工芸の保存についても、提案していきたいと考えています。

(社内報kami-cocoro 里山マイスターの「里山通信」vol.10を転載)

特定非営利活動法人里山保全再生ネットワーク

岩間 敏彦

特定非営利活動法人里山保全再生ネットワーク代表理事。本業(ライター・カメラマン等)で培った技能を生かして社会貢献をしたいと考え、里山保全を始めとする環境保護活動に参加してきた。現在は里山保全・再生に軸足を置きつつ、複数の環境NPOで代表理事・理事などを務める。